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これであなたも『なりやまあやぐ』の達人~なりやまあやぐ発祥の地巡りと演奏講座~

「島を知る・感じる・ふれあう!」をテーマに、19離島の人々が企画したプログラムが体験できる「島あっちぃ 離島観光・交流促進事業」
 
地元コーディネーターをガイドに、島々の個性豊かな自然環境や文化、歴史など、たくさんの魅力に出会えるほか、島の人々との交流が楽しめるのも、このツアーの魅力のひとつ。今回は、19離島78の体験プログラムの中から、宮古島の「これであなたも『なりやまあやぐ』の達人~なりやまあやぐ発祥の地巡りと演奏講座~」をレポートしました。
 
【なりやまあやぐ発祥の地を巡る】
 美しい三線の調べが響く厳かな空間。先生のすばらしい歌声にツアー参加者みんなが聞き惚れ、心癒やされています。
「なりやまあやぐ」は宮古島を代表する島唄。その発祥の地である友利集落で「なりやまあやぐ」や集落の歴史、文化、暮らしを体験しようという今回のツアー。地元の三線の達人に直接「なりやまあやぐ」を教えてもらえるのも、今回のプログラム最大の魅力です。
 
ご夫婦、親子連れ、カップル、三線習い始めの女性など、参加者は10人。
 
島唄好きな人が大勢参加するかと思いきや、意外にも三線未経験者がほとんどでした。
 
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2日目のこの日は「なりやまあやぐ」発祥の地巡りからスタート。「なりやまあやぐ」を世に広めた友利寛功氏の生家や歌碑、「なりやまあやぐまつり」会場となるイㇺギャーマリンガーデンを始め、かつて集落の貴重な水汲み場だった「あま井(アマガー)」や「金志川豊見親屋敷跡遺跡(きんすきゃーとぅゆみゃやしきあといせき)」などの文化財巡りを楽しみました。

 
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集落の大切な水汲み場アマガー。約20mの深さの洞窟を登る水汲みは、女性や子どもの仕事でした。
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【なりやまあやぐに挑戦!】
 午後からは2組に分かれて、いよいよ「なりやまあやぐ」の演奏講座。夜の交流会で発表するとあって、参加者は皆真剣な表情です。多くの人が三線初体験なのでなおさら緊張感が漂っています。
 
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「なりやまあやぐは宮古では最初に習う唄。妻が夫を諭す教訓歌で、唄の意味を知ればきっと上手になるはず。3時間も練習すれば弾けるようになるから、覚えて帰ってね」と、宮古民謡界の重鎮・砂川武次郎さんは話します。しかし、初めて三線を触る参加者はなかなか大変そう。指がついていかず、宮古方言の発音に手こずっています。それでも先生の見本を何度も聞きながら、悪戦苦闘を繰り返し、数時間後にはなんとかゆっくりなら弾けるようになった人も。
 
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別の組の先生・喜屋武則吉さんは「唄と一緒に弾くのは少しハードルが高いかもしれないから、歌詞だけでも覚えてもらえれば」と優しいお言葉。
 
 このツアーがきっかけで三線を練習し「なりやまあやぐまつり」に挑戦する人も多いそうです。「なりやまあやぐまつり」は、ここ友利が「なりやまあやぐ」発祥の地であることをアピールし、先人達が残した文化遺産を継承・発展させること、地域の伝統文化を育む心の大切さと豊かな地域づくりを目指そうと、2006年に「第1回なりやまあやぐ大会」としてスタートした、唄の大会。そんな友利の人々の熱い思いが、今回の体験ツアーにも込められています。

 
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【島の人との熱い交流会】
 2日目の夜は島の人たちとの夕食交流会。各家庭から持ち寄った豪華な料理がテーブルいっぱいに並びます。料理を楽しみ、オリオンビールや泡盛で乾杯して一息ついた頃に、うわさのオトーリがまわって来ました。
 
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 オトーリとは、親と呼ばれる代表者1名が口上を述べ、グラスを飲み干し、そのグラスでほかの参加者1人ひとりにお酒を注ぎまわし飲みます。1周したら次の人に繋ぎ、さらにその人が口上を述べ、全員に盃をまわし、さらに……。
 
飲めない人は乾杯だけでもいいですし、お茶でも大丈夫。
 
コーディネーターの松原さんによれば、本来のオトーリは、お酒が貴重な時代、茶碗1杯のお酒を一口ずつ、みんなで回し飲んでいたそう。正式なオトーリの作法を習い、全員がオトーリ初体験しました。
 
 いい感じに酔いもまわり、みんなの緊張感がほぐれた頃、いよいよ始まった三線講座のお披露目演奏会。三線はマスターできず唄だけという人もいましたが、なかなか皆さん想像以上に上手に演奏しています。ウズウズしていた師匠お二人も歌い出し、唄とおしゃべりの楽しい宴はあっという間に終了。飲み足りない師匠二人に連れ去られ、マンゴー果樹園の作業小屋に作った、自家製カラオケルームで、その後も飲んで、歌って、踊ったとか。

 
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【島の人とのふれあいを】
 お世話になる農家さんに着いてすぐ、子牛誕生の瞬間に立ち会えるなど、そんなハプニングから始まった今回のツアー。3日間のツアーの内、1日目と3日目に自由時間があったので、島内観光もたっぷり楽しむことができました。
 
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「島を知ってもらおうというのが大きな目的。島の人と交流して欲しいので、あえて民泊にしました。大人になって知らない人の家に泊まることもないので、きっと貴重な体験になるはず。遠い親戚を迎えるつもりやっているので、帰るときには近い親戚になって帰って行って欲しい」と、地元コーディネーターの松原敬子さん。実際、一番印象に残っているのは、交流会でのオトーリや民泊先の家族と過ごした時間だったかもしれません。
 
 最後の振り返りゆんたく会でも、「一般の家庭に泊まることはないのでとても新鮮。最初はぎこちなかったけど、すぐに慣れて親戚の家のようにくつろぐことができた」「集落巡りや交流会でのオトーリなど、自分では経験することのできないメニューで楽しかった」「観光というよりも、宮古の人の暮らしを体験することができた」「みんなが家族のように思えた」「一緒に買い物したり料理をつくったのが楽しかった」など、地域の人々との交流に満足する感想が多く寄せられました。松原さんも、こんなにはしゃいでいる農家の人たちを見るのは初めて、と喜んでいます。
 
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「民泊を受け入れた農家の人々もきっと楽しかったはず。みなさんはもう宮古島に知り合いができたわけですから、次に来るときにはぜひ声をかけて、気軽に訪ねて来てください。そして、この中から誰かがなりやまあやぐまつりに挑戦してくれることを願っています」。松原さんのそんな言葉に見送られ、ツアーは涙ながらに終了しました。
 
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