「島を知る・感じる・ふれあう!」をテーマに、19離島の人々が企画したプログラムが体験できる「島あっちぃ 離島観光・交流促進事業」。地元コーディネーターをガイドに島々の個性豊かな自然環境や文化、歴史など、たくさんの魅力に出会えるほか、島の人々との交流が楽しめるのもこのツアーの魅力のひとつです。
今回は19離島78の体験プログラムの中から、渡嘉敷島の「31番目の国立公園 渡嘉敷島の自然をまるごと体感~海・山のWトレッキング~」をレポートしました。
【いつも海の向こうに眺めている渡嘉敷島】
2014年3月5日の珊瑚の日。31番目の国立公園として指定された慶良間諸島。その島々のひとつ渡嘉敷島は、那覇泊港から高速船で約35分、700人あまりが暮らす慶良間諸島で一番大きな島です。毎年冬になると回遊してくるザトウクジラやウミガメ、色とりどりのサンゴやケラマブルーと呼ばれる透明度の高い海が広がる、豊かな自然。そんな渡嘉敷島の自然と人々の暮らしを体感して欲しいと企画された今回の「海・山のWトレッキング」は、美しい海だけではなく、野山や集落など、自然と供に暮らしてきた人々の文化や歴史にも触れることができる、2泊3日の体験ツアーです。
前日まで波が高く高速船が欠航していたため、出港できるかドキドキしながら集まった今回のツアー参加者は総勢19人。波しぶきをたて疾走する船旅を楽しんだ?一行を迎えてくれたのは、コーディネーターの金城肇さんと池松来さんでした。

到着後、まずは島の絶景ポイントをいくつか巡り、オリエンテーション会場へ。自己紹介を兼ねたあいさつでは、「ダイビングだけではない島の魅力を伝えたい」と話す金城さん。「海の美しさは記憶にあるけれど、その他のことは知らないので参加した」と話す参加者のご夫婦。「いつも海の向こうに見えている島を訪れてみたかった」という親子孫のご家族。バスガイドの5人組は「本島以外の島のことも知りたかった。何かの役に立つかもしれないから」と参加。そして、85歳のトゥシビーと結婚50周年のお祝いを兼ねて参加したという老夫婦など、皆さんとても楽しみにしていたそうです。

【渡嘉敷島の自然と暮らしを体感!】
2日目の午前はモニタープログラム「海・山のWトレッキング」からスタートです。まずは阿波連集落を散策し、石垣やヒンプン、防風林など、自然と供に暮らす島の人たちの知恵や工夫を学び、海と集落の繋がりを知りました。渡嘉敷島の南端、ひなくし(船越)、現地名で阿波連園地と呼ばれる岬では、風衝低木群や紫色の小さな花がかわいい準絶滅危惧種のサイヨウシャジンなど、島の豊かな自然を観察。琉球石灰岩の石切場では、石垣やヒンプン、豚小屋やお墓などに使う石材をここで切り出し、集落まで船で運び利用していたそうです。島の成り立ちや地形、植物の話し、やんばるとの類似点、島の暮らしと海との関わりなど、コーディネーターの金城さんと池松さんが話す島の話しはどれも興味深く、ためになるものばかりでした。岬からはザトウクジラのジャンプを目撃する、うれしいハプニングも。

「植物など自然にあまり興味がなかったが、今回ガイドしてもらってとても興味深く楽しかった」「山があり海があり起伏に富んだ島々の風景、渡嘉敷島にこんな雄大な風景が広がっていることにびっくりした」。強い風によって木々がなぎ倒されたように生長する風衝低木群の林。隆起と浸食を繰り返してきた迫力ある岩壁が続く岬。そしてイノーの向こうに広がる深く碧い海原。「沖縄ではない、どこか遠い外国みたい」。太古の地球の息吹を感じる雄大な風景に、参加者はみな感動していました。

【島の人と参加者同士の熱い交流会】
2日目の夜は島の人たちとの夕食交流会を楽しみました。地元で捕れた魚のお刺身やマース煮、島の野菜料理、金城さんお手製のマグロの頭の燻製など、豪華な料理がテーブルいっぱいに並び、島で育てたお米で仕込んだ、島でしか飲むことのできない泡盛「渡嘉敷」で乾杯しました。

今回のモニターツアーは、到着後のオリエンテーション、2日目午前中のモニタープログラム、3日目午前の振り返りゆんたく会以外はフリータイムで、いくつものオプションプログラムも用意。シュノーケリングやダイビングを始め、半潜水艦「イエローサブマリン」による水中散歩やスタンドアップパドルボート、ホエールウォッチングなど、時間の許すかぎりいくつもの体験メニューを楽しむグループ。のんびり島を散策する人たち。ぼーっと海を眺め過ごす人など、それぞれに島の時間を楽しんでいました。

また、初日の夜にはコーディネーターの金城さんが、阿波連集落を散策する「はじめちゃんナイトツアー」を特別に開催。翌日のモニターツアーの予習となる、昔ながらの造りの屋敷や集落の植物などを見て回りました。

最終日の振り返りゆんたく会では、「今まで海で泳いで帰るだけだった渡嘉敷島のことをより深く知ることができて、渡嘉敷島がとても好きになった」「いつも見ていた近い島が、海も山も自然豊かで魅力的な島だと初めて知った。もっと多くの人に渡嘉敷島のよさを教えてあげたい」「今度はシュノーケリングでウミガメと一緒に泳ぎたい」など、季節を変えてまた遊びに来たいという声が多くありました。また、「今回は85歳の榮子おばあちゃんとの出会いが一番の思い出。最初から最後まで笑いと供に過ごすことができた。親戚のようないいチームだった」など、ツアー参加者同士の交流が一番の思い出、と語る人もいました。「島あっちぃ」もうひとつの魅力は島の人、そして参加者同士の交流です。またの再訪と再会を約束して別れた、心に残るツアーでした。
